「健康吹き矢との出合いと日本吹き矢連盟へのお誘い」
名古屋大学名誉教授
労働者健康福祉機構旭労災病院院長(現顧問)
大 野 良 之 平成10年1月中旬のある日の夕刻、私は東京への出張帰りで新幹線の車内にいた。車内で読もうと購入した3種類の夕刊のひとつに、偶然にも、「新潟県長岡市の樋口裕乗皮膚科医師」の写真入りで吹き矢の紹介記事が載っていた。その記事には「健康に効果的とされる腹式呼吸を無理なく行い、矢を的に射る競技の魅力を兼ね備えた吹き矢を、国民的なスポーツにしようと日本吹矢協会を4月に発足させる(以下省略)」とあった。その後何度も東京出張はあったが、やっと7月中旬に吹き矢を実践(相楽現会長さんの指導で)する機会をつくることができた。実践してみると、新聞記事を読んだ時に直感した通り、精神集中、スポーツ性、吹き矢が的にあたった時の爽快感に感激した。これが、私の吹き矢との運命的な出合いです。その頃の私は、82〜83キロの体重が10年間ほど続き、空腹時血糖値も徐々に上昇してきて糖尿病予備軍になっていたので、かなり強烈な速歩ウオーキングと節酒で65キロまで減量に成功していた時でした(大学定年退官5年前の58歳の時)。
で、そんな折りでしたので、吹き矢紹介記事を読んだ時に思った。退官後も今と同程度の速歩ウオーキングをしばらくの間は継続可能であろう。が、やがて足腰が弱り、歩幅も減少、トボトボ歩行になるのは必定だ。体力不足になってもできることは・・・ん・ん・・吹き矢か・・・これはイケルかも・・・腹式呼吸の医学生理学的効果は良く知っている・・・精神集中は将来の脳機能低下の防止にも役立つ・・・と。
7月の実践時には吹き矢用具一式を購入して、すぐに日曜大工の趣味を活かして屋外用の的掛け装置を自作、自宅裏庭で吹きはじめた。しかし、3年ほど経った時に不注意で左背部肋骨を不全骨折、また大学での研究・教育などで超多忙となったことも重なり、吹き矢は中断となってしまった。しかし、大学定年退官(63歳の時)後に愛知県尾張旭市にある旭労災病院の院長に転職したのを契機に再開し、病院では低肺機能の患者さんや骨折などで一時的に身体不自由になった患者さんを主な対象に、山副現副会長さんの指導を依頼して、入院患者さんの精神的癒しとリハビリテーションに吹き矢を取り入れることにした。また、相楽会長さんも病院を訪問され、再会した。今でも、入院で精神的に落ち込んだ、あるいは脳機能低下が多少見られる患者さんの吹き矢が的に当たった時の「えも言われぬ笑顔」や「発見と感動による一瞬の顔の輝き」が目に浮かびます。
さて、吹き矢特有の呼吸法は、横隔膜を大きく上下させて行う腹式呼吸です。腹式呼吸は、胸筋と腹筋を強化させ、通常の胸呼吸(浅い呼吸で、肺尖部という肺の一番上の部分に空気が出入りする)では行き渡らない肺の奥深く、肺全体に空気が入り込みます。したがって、肺でのガス交換(炭酸ガスと酸素の入れ替え)が効率的にできます。その効果は主に、いっぱい酸素を含んだ血液が全身を循環することと腹腔内臓器(特に腸管)への刺激で、さまざまな疾病(喘息、便秘、腰痛、食欲不振、不眠、ストレスなど)の予防医療、さらには健康維持・増進への効果は抜群となります。しかし、こうした効果は理論的な考察で、個人的な実感という側面もありますので、将来的には科学的証拠をもって実証されることが必要です。現在は「心身ともに自立した活動的な状態で生存できる期間(健康寿命)の延長効果」は実証されていませんが、「先ずは実践、そして実感・・・感動!!」の時です。
皆さん、非営利団体「日本吹き矢連盟」の吹き矢仲間になりましょう。
|